パズル作家座談会 第5回

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「カックロ作家が語る、カックロが101倍楽しくなる話」の巻

今日はいつもおもしろいカックロの問題を作っているあかしょうびんさんまいなすよんさんをおよびして、カックロについて語りあいます。ニコリからはスタッフの(金)と(竹)が参加。カックロが大好きな方も、イマイチよくわからないという方も必読の内容ですよ。

(竹)念のため確認なんですけど、おふたりともカックロはお好きですよね?

あかしょうびんそれはもちろん

まいなすよんええ。ただ、ボクの場合は『あとから好きになりました』というのが正確ですね

あかしょうびんボクは最初にハマったパズルがカックロです。20年以上前の話ですけど

まいなすよんカックロの黎明期ですね。ボクは『パズル通信ニコリ』を買いはじめたのが68号(1997年8月発行)です

あかしょうびんボクはもう『パズル通信ニコリ』を卒業していたころかも(笑)

まいなすよんそうですね、あかしょうびんさんは『年に一回パズル・ザ・ジャイアントに載っている人』という印象でした(笑)。当時はまだカックロがおもしろいパズルだという印象はなかったんですよ。単によくわからないパズルという印象で

(竹)転換のきっかけはなんでしょう?

まいなすよんパズルBOX2』の12番、鈴木一成さんの問題です。『9マスの45』がたくさん入っているんです。これすげーじゃん、と

(竹)この問題ですね(と、実際に問題を取りだす)

あかしょうびん45はいくつ入ってるの。数えてみようか。1、2、3、…、14カ所かー

(金)15マス×15マスの問題で14カ所というのはすごいね

あかしょうびんそういえば、ボクもこないだ9マス×9マスで『9マスの45』が8カ所入った問題を作って、ケータイパズル数独に使ってもらいました(2009年10月23日に出題)。まいなすよんさんに悪いと思いながら(笑)

(竹)狙って45をたくさん入れたんですよね?

あかしょうびんそうですね。まいなすよんさんっぽく作ってみようと思って作ってみたら、できちゃった(笑)

(金)あかしょうびんさんなら、どんな枠組みの盤面でも問題として成立させることができるのは当然で、おもしろい問題にできてしまいそうですね

あかしょうびんただボクは、8マスの計、9マスの計はふだんあまり使わないですね。カックロって、『2マスの計と7マスの計』『3マスの計と6マスの計』『4マスの計と5マスの計』というような対の関係がありますよね。たとえば、1,2,4を使う『3マスの7』は、1,2,4を使わない『6マスの38』と対になっている、といったふうに。ところが、9マスの計というのは対になるのが0マスの計で、存在しない。8マスの計の相手も1マスの計で、カックロでは1マスの計というのは禁止されているので、これも実質的に存在しない。数学的に見て、対称性がないので美しくないなあと。だから8マス9マスというのは、枠組みをキレイにしようとしてしかたなく入っちゃったというとき以外には、あまり積極的に使ってこなかったです

まいなすよん美しいといえば、あかしょうびんさんのカックロって枠組みがすごくキレイですよね。盤面の端の、ボクなんかだと『ここは解き味のために、キレイにするのをあきらめてもいいかなー』と思っちゃうようなところも気合いを入れて作っている印象があります

あかしょうびんたしかに枠組みにはこだわっています。前々回、CastyさんとGutenさんの座談会で彼らが短時間で問題を作るという話がありましたけど、ボクはまったく逆なんですよ。彼らは『問題を作らない日もあります』って言ってたけど、ボクは『問題を作る日もあります』なんです(笑)。『作りはじめたら一気に作りあげる』というのも、ボクと正反対。ジャイアントサイズだと10日くらいかけてのんびり作ります。集中力が30分とか1時間くらいしか続かないんですよ。でも、最初に黒マスの位置を決めて枠を作るところだけは、途中でやめないで、一気に作っています。だから、枠組みに関しては自分の中での気合いの入り方が違うんだと思います

(竹)最初に決めた枠組みを、作っている途中で変えたりしないんですか?

あかしょうびんそうですね。途中で枠組みを変えるというのは、原則ないです。カックロに限らずほかのパズルでもそうですね

(金)数独なんかでも、数字を置く場所を組みかえることは、絶対にない?

あかしょうびんいや、ごめんなさい。『絶対』ではないです(笑)。でも、変えるときでもキレイさの範囲内で変えるようには心がけていますね

まいなすよん今日はせっかく(金)さんがいるので、(金)さんのカックロ話も聞いてみたいんですが

あかしょうびん(金)さんは、ほんとにたくさんカックロを作ってきましたよね

(金)初期にはまちがいなくいちばんたくさん作っていましたね。カックロに対するこだわりもいろいろありますよ。特にやさしいカックロですね

あかしょうびん(金)さんの作るやさしい問題は、誰もマネできないかも。よく似た問題は誰でも作れると思うけど。これまで蓄積してきた量が違う。同じように、ボクが作るたいへん問題も、ほかの人にはマネできない独特の色があると思ってます

(金)カックロは個性が出にくいように見えますけど、実は個性が出やすいパズルなんですね

あかしょうびんまいなすよんさんのカックロなんて、枠組みの時点ですでに個性が出ているし

まいなすよんええ。『9マスの45』を追求しつつ十数年間すぎちゃいました(笑)。『9マスの45をたくさん入れる』って目標はわかりやすいから、問題を作りやすいんですよ。ところで、こういう『作者の個性』って、作家でない解くだけの人にもわかるもんでしょうか

(金)わかると思いますよ

(竹)とすると、解く人も作者の名前を見て、その人の個性を考えながら解いたほうが早く解けるかもしれませんね

あかしょうびんそれはあるでしょうね

まいなすよんでも、カックロで個性がわかるほど作っている作家って少なくないですか?

あかしょうびんたしかにカックロには、個性が際だっている作家の数があまり多くない印象ですね

(金)だけど、たとえばぬりかべやへやわけなんかも、個性が確立している作家という意味ではそんなに多くないかもしれません

まいなすよんカックロだけが特殊ってわけではないんですね

あかしょうびん数独は、たぶん、おもしろい問題を作れる人が何百人もいますよね

(金)いるかもしれないね。それに、コンピュータで自動生成して『たまたまおもしろい問題ができちゃった』ということもけっこうあるみたいです。でも、カックロについては、コンピュータで自動生成された問題はどれもひどいんですよ

あかしょうびん数独だと『問題のおもしろさ』をコンピュータで評価する、という研究もされていますよね。カックロは今のところ研究されていないし、たぶんプログラムを書いて評価するのは無理だと思います。カックロのおもしろさはプログラムではカンタンには書けない。特に枠作り。カッコイイ枠組みとか、キレイな枠組みというのはコンピュータじゃ評価できないよね

まいなすよんそうですね、できないと思います


(竹)カックロにはいろいろな手筋がありますが、なにかひとつの手筋にこだわったりしていますか?

あかしょうびん一時期、『4マスの12』(4マスの計が12になっているところ。1,2,3,6か1,2,4,5のどちらかになります)を普及させたくて、ものすごく使っていました

(金)小さいほうの『一通りの計+1』、大きいほうの『一通り-1』ですね

(竹)ほかに『3マスの8』『3マスの22』『4マスの28』などがありますね。ボク自身、その解き筋がわかってきてから、難しいカックロの醍醐味がわかってきた気がします

あかしょうびんそう。『3マスの8』とか『4マスの12』とかを使いこなせるようになると、中級以上の問題が楽しくなるんですよ

(金)これが『一通りの計+2』の『3マスの9』で、1つに4が入ったから残りが2と3、というところまでいくとやりすぎなんですね。『一通りの計+1』がちょうどいい

あかしょうびん『一通りの計+1』は解き手のみなさんにぜひ覚えてほしいですね。これがわかれば中~上級者向けの問題がすごくおもしろくなりますよ。作者側も意識して問題に組みこんでいる人が多いはずなので、気づいてくれたらうれしいです

(竹)ほかに問題を作るときのこだわりはあります?

あかしょうびんボクは8マスの合計が41とか42というのは使いたくないんですよ

(竹)引っかけですね。慣れている人がパッと見たら『7マスの41(2,4,5,6,7,8,9の一通り)』『7マスの42(3,4,5,6,7,8,9の一通り)』と見間違ってしまう、という

(金)最近はその考えが定着してきたから、逆に裏をかいてあえて使っている作家もいますね

あかしょうびん意識して遊びでやっているのはいいんですけど。そうじゃなく、カックロの本質的でない部分で引っかけるというのはよくないと思うんですよ。6マスで34とかもそうですね(『5マスの34』と間違えやすい)

まいなすよんうわー、入れちゃったーという感じですね

(金)たしかに、7マスの39で4を入れたあとに悲しくなることはあります。なんだ『6マスの39(4,5,6,7,8,9の一通り)』じゃないのかよー、って(笑)

あかしょうびんあかしょうの作品にはそういう問題は絶対ないので、安心してください

まいなすよんごめんなさい、まいなすよんの問題には入るかもしれません(笑)


(竹)最後に、みなさんが『楽しい』と思うカックロについて語ってください

まいなすよんボクはメリハリがある問題を楽しいと思います。手が進むところと悩ませるところの落差がきちんとある問題。自分が作れないというのもあるんですけど(笑)

あかしょうびんインタビューでも言ったけど、中級者や上級者にも楽しくて、かつ、初心者にも手に負えないレベルじゃない、という問題が理想です

(金)すごくよくわかります。解く人が、どんなレベルの人であれ、解いてストレスを感じない問題。それはすごく大事なことですよね

あかしょうびん長くニコリの作家をやっていれば、自然に身につくと思う考え方なんですけどね

(金)そういうニコリのペンシルパズルの方向性は、カックロから始まっているんです

あかしょうびん(金)さんとニコリの社長が決めたんですよね。まだニコリの事務所が町田にあったころ。ここでニコリのパズルの行く末が決まった

まいなすよんへえー

(金)でも、別に外向けに積極的にそういう思想を広報したりはしてません。ニコリの誌面はずっと読者のためのもので、解く人が楽しく解いてくれる問題を載せていれば、ニコリの考えは自然に作家にも伝わるだろうとは思っていました。実際、解く人に支持されて、作家にも理解してもらえたからこそ、今まで続いているんだと思います

あかしょうびん当時は作家も読者も編集者もみんな手探りだったんですよね

(金)そうですね。その時期から作家として活躍していて、今も問題を作ってくれているあかしょうびんさんは、貴重な人材ですよ

あかしょうびんなんといっても、昭和デビューですからね(笑)

(竹)カックロがすべてのパズルの始まり、というわけですね! 今日はありがとうございました!


座談会開催 : 2009年11月 2009年12月16日公開

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