作家インタビュー第32回 鈴木悟さん

インタビュー作家座談会

nikoli.comやケータイパズル数独の問題を作ってくださっているパズル作家にあれこれお聞きするコーナーです。今回のゲストは、鈴木悟さん。年齢不詳。謎の男。会社員です。

(竹)子どものころのお話を聞かせてください

鈴木悟算数が好きな小学生でした。先生の教えかたがよかったんです。図形の面積を教えるときも、いきなり公式を言うのではなくて、グループのみんなでアイディアを出しあって公式を作るという教えかたでした。楽しかったです。ひし形の面積のときはちょっとがんばっちゃって、ボクひとりで20通りぐらいのアイディアを出しました

(竹)パズルを始めたのは?

鈴木悟中学のとき、一筆書きや虫くい算の問題を作るのに凝ったことがありました。パズルらしいパズルにハマったのはそれが最初だと思います。数学の教科書に載っているのを見て、作ってみました

(竹)作った問題をまわりの誰かに解いてもらった?

鈴木悟いえ、自分で作って楽しむだけでした。友だちや家族に解かせてみたこともあるんですけど、無茶な問題ばっかり作っていたので逃げられちゃいました。虫くい算なんて、答えがひとつに決まらなければならない、という意識もなかったんですよ

(竹)それは解くほうには厳しいですね

鈴木悟ほかに、中学では魔方陣(正方形の盤面に数字を配置して、すべてのタテ・ヨコ・ナナメの列について数字の合計を同じにしたもの)の研究もしていました。奇数×奇数サイズの魔方陣の作りかたを、何十通りも見つけましたよ。のめり込む性格みたいです

(竹)ニコリに載っているようなペンシルパズルとの出会いは?

鈴木悟中学校でも何度か見聞きしたことはあったんですが、ハマったのは高校生になってからです。きっかけは『数学セミナー』という数学の雑誌の、パズルのコーナーです。載っていたのはニコリのじゃなかったけど。おもしろくて、自分でも問題を作ってみようと思ったんです。作りはじめてみたらルールの一部に気に入らない部分があったので、オリジナルのルールで作ったりしていました。うまくはいきませんでしたけど

(竹)余談ですが、数学セミナーには今はニコリのパズルが連載されています

鈴木悟そのころ同時に、パズル専門雑誌も買っていました。雑誌の名前は忘れちゃいましたが、ニコリではなかったです。懸賞がついていたので、解いて送って、解いて送って、を繰り返してみたんですが、すぐに『これは当たらないな』と気づいてしまいました。それで買うのをやめて、ほかの雑誌を漁っていたときにニコリを見つけました

(竹)最初の印象は?

鈴木悟まず、本の形が明らかにヘンだなと思いました。いろいろなパズルが載っているので気に入りました。投稿を受けつけていることも知りました。それで、投稿して載ったらお金がもらえるだろうと思って、買いはじめました

(竹)最初は意外と打算的な理由だったんですね

鈴木悟あはは、そうですね。買った日にいくつか問題を解いて、翌日から問題を作りはじめました

(竹)早いなあ。何号ぐらいの話ですか?

鈴木悟54号です。とにかく載りたかったので、5種類のパズルで、合計20問ほど作って送りました。パズルの種類はちゃんと覚えていないんですけど、ケイスケナンスケ(どちらも、リストにあかされた数字の並びをマス目に入れていくパズルです)、四角に切れあたりだったかな。57号に、初投稿のケイスケが載りました

(竹)当時の鈴木さんの問題を何問か解いたことがありますが、すごく難しい問題が多かったですよね。難しすぎてボツになった問題も多かったのでは?

鈴木悟ええ、多かったです。いちばん投稿の勢いがあったのもそのころでした。20種類120問をいちどに投稿したこともありました

(竹)大学入試のころも作り続けていました?

鈴木悟はい。それで思い出した。実は受験シーズンに交通事故にあって、病院に入院していた時期があったんです。1カ月くらい入院していました。でも、病院にいるときに心配だったのは受験じゃなくて、ニコリへの投稿がとぎれてしまうことでした。見舞いに来た親に『机の引き出しに問題の原稿があるから代わりに送っておいて』と頼んだりしました。大学は推薦で受かりました。面接でパズルの話をしたので、それが効いたのかもしれません

(竹)パズルが受験の役に立ったんですか。珍しいケースですね。大学では?

鈴木悟ずっと作り続けていました

(竹)大学だと、パズル以外にもおもしろいことがたくさんあったのでは?

鈴木悟ええ。パソコンにハマりました。中学のころからプログラミングに興味があって、ずっとあこがれていたんです。いくつか簡単なプログラムを勉強したあと、最初に虫くい算を解かせるプログラムを作りました。実益を兼ねて(笑)

(竹)パズルの中身の話をしましょうか。好きなパズル、嫌いなパズルは?

鈴木悟数字のパズルはどれも好きです。クロスワードのような、コトバ系のパズルが苦手です。知らないコトバが出てくるんじゃないか、という恐怖から逃れられないんです

(竹)コトバ系のパズルにはそういう不安はつきまといますよね。そこが魅力でもあるんですが。nikoli.comでは、橋をかけろやひとりにしてくれをほかよりたくさん作られていますが、特にこれらに思い入れがあるわけではないんですか?

鈴木悟そうですね。理詰めで決まるパズルは全部好きです。そういう意味では、数字のパズルの中では理詰めだけでは解きにくいナンバーリンクはちょっと苦手です

(竹)パズルを作るとき、これだけは譲れない、というこだわりはありますか?

鈴木悟個性を出したいです。もっと言うと『署名』を入れたい。署名というのは、見たり解いたりしただけで、これは誰の問題だとわかっちゃうような特徴的なネタのことです。たとえば、橋をかけろで数字が4しかない問題を作るのはボクしかいないだろう、というような。ほかの作家だと、小見枝さんがへやわけで数字を点対称に配置するのも署名だと思います

(竹)ネタが尽きることはないんですか?

鈴木悟そうならないよう、見せかたを工夫しています。同じネタでも、別の形で見せたら目新しくなりますよね。1つのネタで1問しか作れないと、どんな人でもすぐにネタが尽きてしまいます。でも、見せかたを変えたり、複数のネタを組み合わせたりすれば、いい問題を何百問も作れる。ニコリでずっと作り続けるためには必要なことだと思います。昔、大学のサークルに、『究極の問題ができた!』と言ってニコリに投稿して、載った人がいたんですよ。でもその人は、それで満足して投稿をやめちゃったんです。それはそれでいいと思うんですけど、ボクはとにかく長く作り続けたいんです。作り続けたいと思ってやってるうちに、自然にそういう感覚が身につきました

(竹)なぜ載り続けたいんですか?

鈴木悟どこかでパズル作りの話になったときに『過去の人』より『今も続けている人』と思われるほうがいいじゃないですか。あとは、たまに開かれる作家どうしの集まりに顔を出したいというのがモチベーションになっています

(竹)作るほうでなく、解くほうはどうですか? 他人の問題はどのくらい解いています?

鈴木悟それが、あんまり解いていないんですよ。もともと『解く』ことと『作る』ことにあまり差を感じていないので、問題を解く時間があるなら、そのぶん作ったほうが楽しいんです。でも、問題を作るときの参考として、他人の問題を解くことはあります

(竹)パズル以外の趣味は?

鈴木悟プログラミングは、今も趣味で続けています。今はパズルとプログラミングだけやっていれば満足です

(竹)プログラミングの魅力って何ですか?

鈴木悟どんなめんどくさいことでも、自分の指示どおりに動いてくれるところです。今は立体パズルを扱うプログラムを組んで遊んでいます。プログラムに無茶な仕事を押しつけて、パソコンのCPU使用率が100%近くなるのを見るのが好きです

(竹)パソコンがかわいそう(笑)。テレビや映画は観ないんですか? 音楽とか

鈴木悟ほとんど観ないですね。たまに政治の討論番組やドキュメンタリー番組を観るていどです。音楽も聴かないです

(竹)旅行に行ったりは?

鈴木悟行かないですね。興味もないです。パスポートの取りかたも知りません(笑)

(竹)ひたすらパズルとプログラミングがお好きなんですね。将来の夢は?

鈴木悟このままこの生活がずっと続けられればいいと思っています

(竹)ずっとパズル作りとプログラミングをしていたいということ?

鈴木悟はい。今の生活にはわりと満足しています

(竹)鈴木さんの理想のパズルとは?

鈴木悟理想かどうかわからないですが、解く人の行動や考えを完璧にコントロールした問題ができないか? ということをよく考えています。解く人ってそれぞれ、パズルの問題を見て、考えこんだり、新しい展開を見つけて感動したり、といろいろなことをしますけど、それらをうまく制御できないかなと。何年も前から構想だけはあるんですけど、どうやったらいいのかはぜんぜんわからないです

(竹)プログラミングの話に通じるところがありますね。神様になりたい願望がある?

鈴木悟それはないつもりですけど(笑)

(竹)最後に、鈴木さんにとってパズル作りとは?

鈴木悟生きている証を刻む行為。ボクが死んでもパズルは残りますよね。それがボクが作った問題だとわかってもらう必要はないけど、ボクが死んで何年かあとに、誰かがボクの問題を解いて『こんな問題を作るやつが世の中にいるんだ』と思われれば本望です


インタビュー : 2011年1月 2011年2月14日公開